奈良地方裁判所 昭和47年(ワ)107号 判決 1974年11月27日
原告
吉田年雄
被告
土井常彰
ほか一名
主文
一 被告らは原告に対し、それぞれ金三一万九、二〇〇円及びこれに対する昭和四七年一一月二日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告その余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一申立
一 請求の趣旨
(一) 被告らは連帯して原告に対し、金四六万五、〇〇〇円及びこれに対する昭和四七年一一月二日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。
(二) 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
(一) 原告の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二主張
一 請求原因
(一) 原告は次の交通事故により物損を受けた。
1 発生時 昭和四六年四月一六日午後一一時一五分頃
2 発生地 奈良県大和郡山市横田町一五一の一(国道二四号線)
3 事故車 普通乗用自動車奈五ひ六九六一
4 運転者 被告 土井常彰
5 被害者の事情 軽四輪乗用車を運転
6 事故の態様
原告が北から南へ進行中、被告常彰運転の車が南から北へ進行してきて先行車を追越のため、センターラインを越えて原告車の前部右側に接触し、原告車を道路東側の田の中へ横転させた。
7 物損
原告車両を修繕不可能とした。
(二) 帰責事由
<1> 被告常彰は不法行為の責任(民法七〇九条)、被告輝吉は使用者の不法行為責任(民法七一五条)
<2> 右に該当する具体的な事実
被告常彰は被告輝吉の仕事の手伝をしていて、本件事故当時も被告輝吉の所用のために本件加害車両を運転中であつた。
<3> 過失の内容
被告常彰は先行車を追越すためにセンターラインを越えて原告車両に接触したが、追越にあたり前方を確認せず、又センターラインを越えて追越したこと、危険を感じてからのハンドル、ブレーキ操作が適切でなかつたこと、制限速度を越えていたこと。
(三) 損害
<1> 物損 金四二万五、〇〇〇円
<2> 破損車両引取代 金一万円
<3> 弁護士費用 金三万円
二 請求原因に対する認否
(一) 請求原因 (一)の<1>~<5>は認める。
(一)の<6>のうちセンターラインを越えたとの点を否認し、その余は認める。
(一)の<7>は否認。
(二) 請求原因(二)(三)は否認。
三 抗弁
(一) 過失相殺
かりに被告常彰に過失があるとしても、原告も道路の左側部分を進行すべき注意義務があるのに中央部分を進行した過失があるから斟酌すべきである。
(二) 相殺
本件事故で被告常彰運転(被告輝吉所有)の車両は損傷をうけ、昭和四六年四月末頃訴外東豊機械株式会社で修理しその代金二一万円を要した。これは原告の過失に基くものであるから被告らは原告に対し同額の損害賠償請求権を有するので、被告らは本訴債権と昭和四八年一〇月三一日の口頭弁論期日において対等額で相殺の意思表示をする。
四 抗弁に対する認否
否認する。
第三証拠〔略〕
理由
一 請求原因(一)<1>~<5>の事実は当事者間に争いがない。
二 被告常彰の過失について
〔証拠略〕によると被告常彰が前車を追越すにあたり対向車線に対する注意を欠いた点に過失があることを認めることができる。
三 帰責事由について
前記のとおりであるから被告常彰は不法行為者として本件事故により原告が蒙つた損害を賠償する義務がある。
〔証拠略〕によると、当時被告常彰は建材業をしていた父被告輝吉の仕事の手伝をしており、当日は被告常彰の結婚話のため父の代りに相談に行きその帰途本件事故をおこしたことを認めることができるが、このような場合においても被告輝吉の事業の執行について生じたものと解すべきであるから、被告輝吉は民法七一五条により使用者として原告が蒙つた損害を賠償すべき義務があるものといえる。
四 損害(弁護士費用を除く)
<1> 物損
〔証拠略〕を総合すると本件事故により原告車は使用不能となつたがタイヤ三本(価格約二万一、〇〇〇円)は原告において持帰り使用したこと、当時の原告車の価格は金四二万五、〇〇〇円であつたことを認めることができるので本件事故により原告は差引金四〇万四、〇〇〇円の損害を蒙つたことになる。〔証拠略〕中右認定に反する部分は採用し難い。
<2> 破損車両の引取代金一万円
〔証拠略〕によるとこれを認めることができる。
五 過失相殺について
〔証拠略〕によると本件事故について原告も道路の左側部分を進行しなかつた点に過失があつたことを認めることができ、右証拠によると被告常彰と原告の過失の割合は八対二であると解するのが相当であるから前記原告の損害より二割を差引くと金三三万一、二〇〇円となる。
六 相殺について
〔証拠略〕によると、被告車両は本件事故により修理代金二一万円を要する損傷をうけたことを認めることができる。相殺の意思表示が昭和四八年一〇月三一日の口頭弁論期日になされたことは記録上明らかであるが原告と被告常彰の過失の割合は前記のとおり二対八であるから右損害金二一万円の二割である金四万二、〇〇〇円について相殺がなされたと解するのが相当である。
七 弁護士費用について
弁護士報酬規定等を考慮すると弁護士費用は金三万円が相当であると思料する。
八 以上のとおりであるとすると原告の被告らに対する請求は、被告らに対しそれぞれ金三一万九、二〇〇円とこれに対する不法行為時より後である昭和四七年一一月二日以降完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を求める範囲で理由があるから右の範囲で認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用につき民訴法八九条、九二条但書、九三条一項本文を仮執行宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西池季彦)